バセドウ病をカミングアウトした歌手の生んだ風評被害

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甲状腺機能異常について書きます。

甲状腺機能異常は、大きく分けると甲状腺機能亢進法甲状腺機能低下症に分けられます。
甲状腺機能亢進症の代表的な病気はバセドウ病、低下症の代表的な病気は橋本病です。
甲状腺は内分泌器官のため、専門としては内分泌内科ですが、私たち専門外でも診察し処方をするなじみの疾患です。

出典元:PhotoAC

バセドウ病として有名なのは、歌手の綾△さんです。バセドウ病を理由に芸能界を引退して、その後復帰して個人事務所を立ち上げました。

同時期に夫も小説家デビューを理由に俳優を引退して事務所を退所し、妻と一緒に個人事務所を設立し、作家を目指すはずでは?という世間の突込みにもめげずに俳優に復帰し、見事に干されました。

もう一人、バセドウ病を公表していませんが、甲状腺のことを少しでもわかる医師の間ではまず確実とされているのが、サッカー選手の本田圭△氏でしょう。

まずは本田圭△氏に関してです。
サッカーチームの移籍時?それとも、契約更新時?のメディカルチェックで引っかかったのでしょうか?おそらくバセドウ病と思われます。

根拠としては、眼球突出で、頸部の傷は甲状腺の全摘ではないでしょうか。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療としては、一般的にはメルカゾールもしくはチウラジールという甲状腺ホルモンを抑える薬の内服です。ただ、この薬は頻回の血液検査が必要なのと、短期間でのホルモン値の確実なコントロールができにくいのです。

そのため、契約時にホルモンのコントロールを(早急に)する必要がある場合は、一つの選択肢として、内服により甲状腺ホルモンを下げるのではなく、全摘(全部とる)してホルモンが出ないようにしてから、ホルモンを補う(チラージンの内服)という治療の選択肢が上がってきます。

本田圭△氏の頸部の傷は、甲状腺の腫瘍の診断や治療のため一部切除下にしては大きすぎ、甲状腺癌の治療のためにしてはリンパ節郭清するには小さすぎ、ちょうど単純に甲状腺を全摘する傷のサイズに一致します。

ということで、本田圭△氏バセドウ病を発症し、甲状腺ホルモンの早急かつ確実なコントロールのために手術(全摘)を選択し、ホルモン補充療法を行っていると思われます。

多すぎるホルモンを薬で下げるより、甲状腺を切除して少ない(出ない)ホルモンを補充する方が確実なのです。メルカゾールやチウラジールより、チラージンの方が血中濃度が安定しやすいのです。

プロとして契約のために最善を尽くしたのでしょう。

ところで、歌手の綾△さんです。
数々のヒットで知られています。歌は良い歌です。
この人、バセドウ病を発症して病気と闘っているとカミングアウトされ、そのため事務所を退所したそうですが、私がフォローしている甲状腺機能亢進症の患者様(40-50人程度?)は、やはり女性がほとんどです。

主婦の人もOLの人もいますが、OLの人で甲状腺ホルモンのコントロールのために退職した人も休職した人も、一人もいません。また、主婦の方も、一時的にせよ寝込んでしまって家事が出来ず、家政婦を雇った患者様も一人もいません。

歌手活動の続行が困難である状況は考えにくく、本田圭△氏とは真逆で仕事の続行に積極的に終止符を打ちたいがために、もっと穿った見方をすると、同情をひく原因でいったん事務所を退所して、その後に個人事務所を設立するがために、バセドウ病を利用した、としか思えない。

発信力の高い、そして一般の人への影響力の高い二人ですが、同じ病気に直面した時にとった行動は対照的で、少なくとも、個人事務所の設立のために病気を利用したため、病気に対するネガティブな誤った認識が少なからず広がったのは非常に残念だ。